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サンタも命懸け? 煙突から侵入する医学的なリスク

[2025.12.09]

ハイサイ!安謝ファミリークリニック院長の高良です。

12月といえばクリスマス。クリスマスといえばサンタクロースですよね。
サンタさんといえば「煙突から入ってくる」のがお決まりですが、皆さんは実際の「煙突の中」を想像したことはありますか?

実は、この「煙突」通るという行為は医学的には非常に健康リスクを高めてしまう行為だったんです。今日は、煙突にまつわる医学の発展のお話についてまとめてみました。

煙突掃除の少年たち「クライミング・ボーイズ」

18世紀、産業革命期のイギリスでの出来事です。
当時の家々の煙突はとても狭く複雑に曲がりくねっており、大人が入って掃除することは不可能でした。そこで雇われたのが、体が小さな子供たちでした。

「クライミング・ボーイズ」と呼ばれた彼らは、4歳から10歳くらいの孤児や貧しい家の子ばかり。彼らは来る日も来る日も狭い煙突に潜り込み、全身真っ黒になりながら煤をかき出していました。

しかし、彼らを待っていたのは、過酷な労働だけではありませんでした。大人になった彼らの多くが、ある「奇妙な病気」に苦しむことになったのです。

外科医パーシヴァル・ポットの気づき

その病気とは、皮膚がんの一種(陰嚢がん)でした。
当時、がんは体液のバランスが崩れて起こるものだと漠然と考えられていましたが、1775年、ロンドンの外科医パーシヴァル・ポット(Percival Pott)がある事実に気づきます。

「この特定のがんは、なぜか元・煙突掃除夫の男性ばかりに発症している」

彼は調査を進め、衝撃的な結論を導き出しました。


「煙突の煤(すす)が皮膚のシワに溜まり長い時間皮膚に接していたことが、がんの原因である」

これは医学史上、とてつもなく大きな発見でした。なぜなら、「環境にある特定の物質が、がんを引き起こす(発がん性がある)」ということを、人類が初めて突き止めた瞬間だったからです。

現代につながる教訓

ポット先生の発見は、世界初の「職業がん」の認定と言われています。
この発見のおかげで、「煤には有害物質が含まれている」という認識が広まり、のちに子供たちを煙突掃除に従事させることを禁じる法律(煙突掃除夫法)が整備されるきっかけとなりました。

さらに後の研究で、煤に含まれる「ベンゾピレン」という物質が発がん性物質の正体であることも科学的に証明されました。私たちが今日、発がん性物質を避けて生活できているのも、元をたどれば当時の少年たちの犠牲と、ポット先生の観察眼があったからこそなのです。

おわりに

いかがだったでしょうか、サンタクロースが通る煙突。
そこには、かつて命がけで働いた子供たちと、そこから医学を前進させた科学者たちのドラマがありました。

 

 

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