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鎮静剤ってなんですか?内視鏡検査(胃カメラ・大腸カメラ)の鎮静について

[2025.04.28]

ハイサイ! 院長の高良です。「内視鏡検査って、なんだか苦しそう…」そう思っていませんか?

当院では、そんな不安を抱える皆様に、少しでも楽に胃カメラ・大腸カメラを受けていただくために、ご希望に応じて「鎮静」を用いた検査を行っています。

「麻酔」と聞くと、ドラマの手術室のような本格的なものを想像する方もいらっしゃるかもしれません。あるいは、歯医者さんの注射を思い浮かべる方もいるでしょう。

医療現場では、「麻酔」という言葉は広い意味で使われますが、作用の範囲や意識の状態によって様々な種類と方法があります。今回は、当院で使用している鎮静の方法、薬剤、そしてその効果や気になる副作用・リスクについて、詳しく解説していきます。

麻酔の種類:全身麻酔、静脈麻酔、局所麻酔(内視鏡検査における使い分け)

麻酔は、その作用範囲と意識の状態によって、大きく3つに分けられます。

  • 全身麻酔:静脈麻酔や吸入麻酔を使用したうえで筋弛緩剤も投与するため、自発呼吸もなくなり人工呼吸器が必要になる麻酔です。意識は完全に消失し体が動くこともありません。手術室でよく使われる麻酔です。

  • 静脈麻酔: 点滴や注射で静脈より投与し、自発呼吸を残した状態で意識レベルを下げる麻酔です。

  • 局所麻酔:痛みを抑えたい部位だけに施す麻酔で、意識は保たれます。表面麻酔、浸潤麻酔、伝達麻酔、脊髄くも膜下麻酔、硬膜外麻酔などがあります。

内視鏡検査においては、以下のように使い分けています。

  • 胃カメラ:のどや鼻に行う表面麻酔(局所麻酔)と、静脈麻酔を併用します。

  • 大腸カメラ静脈麻酔のみで行います。

検査中の意識レベル:眠りすぎない、最適な鎮静

内視鏡検査で行うのは、手術のような完全に意識をなくす全身麻酔ではなく、自発呼吸を残した状態で意識レベルを下げる静脈麻酔という方法です。

最適な鎮静レベルは、Ramsayスコア3-4(下図1参照)の意識下鎮静という状態です。これは、大声で名前を呼ばれたり、体を揺すられたりすると、「うぅーん、はい…」と返事ができる程度の浅い眠りです。当院では、この状態を目安に、患者さん一人ひとりに合わせて鎮静薬の量を調整しています。

ただし、お酒に強い方や、睡眠薬・安定剤を常用されている方は、鎮静薬が効きにくい傾向があります。薬の量を工夫しても、十分な効果が得られない場合があることをご了承ください。

図1:Ramsay鎮静スケール

スコア 患者の状態

不安、興奮、落ち着きがない、またはその両方

協力的、落ち着いている、見当識がある

刺激には反応するが、指示には緩慢にしか反応しない

弱い咳嗽反射または咽頭反射がある刺激にのみ活発に反応する

刺激には緩慢にしか反応しない、または反応しない

刺激に反応しない

静脈麻酔薬の種類とその特徴

基本的に当院ではミダゾラムという全国でも広く使われて多くの実績がある麻酔薬を使用しています。患者様の年齢、体格、既往歴、嗜好(飲酒量など)、服薬歴などを考慮し、投与量を検討しています。

1. ミダゾラム

当院が採用している麻酔薬です。年齢や体格、性別に合わせて2~3mgで投与を開始し、効果を見ながら必要に応じて追加投与しますが、安全性を考慮して上限は5mgとしています。

メリット

  • 半減期が短いため、検査後に比較的早く鎮静から覚めます。

  • 逆行性健忘効果があり、検査中に痛みを感じたとしても、後でその記憶が残りづらいという大きな利点があります。「先生、検査はまだですか?」という声をいただくこともあります。

デメリット

  • まれに、検査後の結果説明なども忘れてしまうことがある点です。

2. ジアゼパム

特にお酒をたくさん飲む方など、ミダゾラムが効きにくいと考えられる患者さんに使用します。アルコール中毒の離脱症状を和らげる効果もあり、深い眠りには至らなくても、緊張や不安を和らげ、リラックスした状態で検査を受けていただけます。5~10mgを使用します。

メリット

  • 飲酒量の多い方でも比較的安全に使用でき、不安や緊張を和らげる効果が期待できます。

デメリット

  • 半減期が長く、検査後も眠気などの鎮静効果が残りやすいことがあります。

  • 投与部位に血管痛や血管炎を起こす可能性があります。

3. ペンタゾシン

眠らせるというよりは、痛みや苦しみを感じにくくする鎮痛剤です。軽度の鎮静効果もあり、胃カメラでは嘔吐反射や腹部の膨満感を、大腸カメラでは腸が伸びる際の腹痛を軽減し、楽に検査を受けていただけます。睡眠薬や安定剤を常用している方にも効果が期待できます。7.5~15mgを投与します。

メリット

  • 睡眠薬や安定剤を常用している方にも効果が得られやすいです。

  • ミダゾラムやジアゼパムとは異なる作用機序のため、これらの薬剤だけでは十分な鎮静が得られない場合に併用することがあります。

デメリット

  • ミダゾラムやジアゼパムと併用すると、過鎮静に陥る可能性があるため、慎重な投与が必要です。

  • 検査後、めまいふらつきが出やすいことがあります。

鎮静の効果は人それぞれ、初回から深い鎮静は危険な理由

鎮静の効果は、患者さんの体質やその日の体調によって大きく異なります。

静脈麻酔は、不安や苦痛を取り除いてくれるメリットがある反面、効きすぎると血圧が低下したり呼吸抑制がおこることもあり危険な側面もあります。

初めに麻酔を使用される方は、少量の投与量から調節していくことがあり満足な麻酔効果が得られない方もおられますが、安全を担保するためだとご理解ください。

どのような場合でも、使用した薬剤や量、効果などをカルテに詳しく記録し、次回の検査に活かせるように努めていますので、麻酔の効きが思うようにいかなかった方でも次回はより良い麻酔が行えると思います。

鎮静のリスクと安全対策

適切な鎮静を用いることで、苦しい検査を楽に受けられることは大きなメリットです。しかし、鎮静の使用にはリスクも伴うことをご理解ください。

2016年に日本消化器内視鏡学会から報告されたデータによると、内視鏡検査に関連する偶発症のうち、鎮静・鎮痛薬に関連するものが約半数を占めています。具体的な症状としては、呼吸抑制、血圧低下、吐き気、転倒などが報告されています。(下図2参照)

図2:内視鏡検査に関連した偶発症の頻度(2016年 日本消化器内視鏡学会報告より)

偶発症の種類 頻度 死亡数

前処置に関連した偶発症

472例 (0.0028%)

9例(0.00005%)

うち鎮静・鎮痛薬関連

219例 

4例

腸管洗浄液

105例 

3例

咽頭麻酔

39例 

0例

鼻腔麻酔

29例

0例

その他の局所麻酔

5例

0例

鎮痙薬

31例

0例

抗血栓薬休薬

26例

1例

原因不明

18例

1例

合計

472例

9例

ちなみに調査された内視鏡検査の総数は17087111件、このうちの472件となると0.0028%です。
死亡例は0.00005%になります。

決して多い頻度ではありませんが、鎮静・鎮痛薬に関連する偶発症では死亡例も報告されており、鎮静には一定のリスクがあることを認識しておく必要があります。

当院では、患者様の安全を第一に考え、以下の対策を徹底しています。

  • 経験豊富な院長による鎮静: 豊富な知識と経験に基づき、患者様の状態に合わせた適切な鎮静を行います。

  • 生体モニターの完備: 検査中だけでなく、リカバリー室にも生体モニターを設置し、患者様の呼吸状態や血圧などを常に監視します。

  • 十分な看護師の配置: 常に誰かの目が届くよう、必要な人数の看護師を配置しています。

  • 緊急時対応の準備: 鎮静拮抗薬、酸素マスク、蘇生セットなどをすぐに使用できる場所に配備しています。

苦痛のない内視鏡検査で、がんからあなたを守りたい

私は、がんから命を守るためには定期的な胃腸検診が非常に重要だと考えています。しかし、そのために「苦しい」検査を我慢する必要はないと思っています検査は体の異常を早期発見するために、躊躇なく受けられる「苦しくない」ものであるべきです。

当院では、患者様の安全に最大限配慮しながら、少しでも苦痛を軽減するために積極的に鎮静を使用しています。過去の検査で辛い思いをされた方や、検査を受けることに強い不安を感じている方は、ぜひ一度当院にご相談ください。

ご注意ください:鎮静後の運転はできません

鎮静薬使用後は、お酒を飲んだ後のようにぼーっとしたり、ふらついたりすることがあります。そのため、検査当日は自転車を含む一切の乗り物の運転はできません。公共交通機関をご利用いただくか、ご家族や付き添いの方に送迎をお願いするようにしてください。

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