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【院長が解説】レジオネラ菌は家庭にも潜む!症状・診断・治療法と家庭でできる完全対策

[2025.06.24]

 ハイサイ!、安謝ファミリークリニック院長の高良です。

 先日、大阪・関西万博の施設でレジオネラ菌が検出されたというニュースを見て、心配に思われた方も多いのではないでしょうか。レジオネラ菌と聞くと、「温泉や公衆浴場など、特別な場所の話」と思われがちですが、それは大きな誤解です。

 実は、レジオネラ菌は私たちの身の回りの水環境に広く生息しており、ご家庭でも感染する可能性が十分にあるのです。

 特にこれからの季節、お子様が喜ぶ家庭用プールなど、新たな感染源となりうるものも増えてきます。今回は、皆さまがご家庭で安心して過ごせるよう、レジオネラ菌の正しい知識から、疑わしい場合の診断・治療、そして具体的な予防策まで、網羅的に解説していきます。

 そもそも「レジオネラ菌」とは?

 レジオネラ菌は、土や川、湖など自然界のどこにでもいる細菌です。一見すると無害そうですが、特定の条件下で増殖すると、人の健康に害を及ぼすことがあります。

  • 好む環境:20~50℃の温かい水(特に36℃前後で最も活発に増殖)

  • 潜む場所:ぬめり(専門用語で「バイオフィルム」)がある場所

  • 感染経路:菌を含んだ**目に見えないほどの細かい水の粒(エアロゾル)**を吸い込むことで感染します。

 重要なのは、水を飲んで感染することはほとんどないという点です。シャワーや加湿器、噴水などから発生する「霧状の水」を吸い込むことが主な原因となります。

 レジオネラ症の主な症状

 レジオネラ菌に感染すると、「レジオネラ症」という感染症を発症することがあります。これには大きく分けて2つのタイプがあります。

  1. レジオネラ肺炎(重症型)

    • 症状:高熱、悪寒、筋肉痛、頭痛、咳、痰(たん)、呼吸困難など。下痢や意識障害を伴うこともあります。

    • 特徴:適切な治療が遅れると重症化しやすく、命に関わることもあります。特に高齢者や基礎疾患のある方は注意が必要です。潜伏期間は2~10日です。

  2. ポンティアック熱(軽症型)

    • 症状:発熱、悪寒、筋肉痛など、インフルエンザに似た症状。

    • 特徴:一般的に症状は軽く、数日で自然に治ることがほとんどです。潜伏期間は1~2日です。

 もし感染を疑ったら?【診断と治療法】

 「もしかして…」と思ったら、決して自己判断せず、速やかに内科や呼吸器内科を受診してください。その際、「2週間以内に温泉や公衆浴場、あるいは清掃していない加湿器などを使用したか」を医師に伝えると、診断の助けになります。

 診断方法

 レジオネラ症の診断は、主に以下の方法で行われます。

  • 尿中抗原検査:最も迅速で一般的な検査です。尿を採取するだけなので患者さんの負担も少なく、15分程度で結果が分かります。これにより、迅速な治療開始が可能になります。

  • 喀痰(かくたん)検査:痰(たん)を採取し、菌そのものを探す検査です。菌を培養して増やす方法や、菌の遺伝子を調べる「PCR法」などがあります。

  • 胸部X線(レントゲン)検査:肺炎の広がりや状態を確認するために行います。

 治療方法

  • レジオネラ肺炎の場合
    レジオネラ菌には、ニューキノロン系マクロライド系といった種類の抗菌薬(抗生物質)が有効です。診断がつき次第、速やかにこれらの薬で治療を開始します。早期に適切な治療を行えば、多くは回復に向かいます。何よりも早期発見・早期治療が重要です。

  • ポンティアック熱の場合
    軽症であり、特別な抗菌薬治療を行わなくても自然に回復することがほとんどです。症状を和らげる対症療法が中心となります。

【要注意】家庭内に潜むレジオネラ菌の発生源TOP3

 では、具体的にご家庭のどこに注意すればよいのでしょうか。特に危険性が高い場所を3つご紹介します。

 1. 追い焚き機能付きのお風呂・24時間風呂

 毎日お湯を入れ替えていても、浴槽と給湯器をつなぐ追い焚き配管の中は、お湯が残りやすく、レジオネラ菌が増殖するのに最適な「ぬめり」の温床となりがちです。追い焚きをすることで、配管内で増殖した菌が浴槽内に放出され、湯気と一緒に吸い込んでしまうリスクがあります。

 2. 加湿器(特に超音波式)

 冬場に活躍する加湿器も注意が必要です。特に、水を振動させてミストを発生させる超音波式加湿器は、タンク内の水が汚れていると、レジオネラ菌をそのまま室内に拡散させてしまいます。タンク内の水は毎日交換し、定期的な清掃を怠らないことが重要です。

 3. 夏場の家庭用ビニールプール

 これからの季節、特に注意してほしいのが家庭用プールです。
水道水には塩素が含まれているため、入れた直後は安全です。しかし、一度使った水を数日間そのまま放置すると、塩素が抜けてしまい、太陽光で水温が上昇します。これがレジオネラ菌にとって絶好の増殖環境となるのです。
子どもたちがプールで遊ぶ際にはねた水しぶきがエアロゾルとなり、それを吸い込むことで感染する危険性があります。

 家庭でできる!今日から始めるレジオネラ症対策

 怖い話が続きましたが、ご安心ください。レジオネラ症は、日々の簡単な対策で十分に予防できます

 お風呂の対策

  • 浴槽のお湯は毎日交換し、その都度きれいに掃除しましょう。

  • 月に1回は、市販の**「風呂釜洗浄剤」**を使って、追い焚き配管の内部を徹底的に洗浄してください。

  • 24時間風呂をお使いの場合は、取扱説明書に従い、定期的な水の交換と配管の消毒・清掃を徹底しましょう。

 加湿器の対策

  • タンクの水は毎日新しい水道水に交換しましょう。継ぎ足しは絶対にやめてください。

  • タンク内やフィルターは、取扱説明書に従ってこまめに清掃し、ぬめりが発生しないようにしましょう。

  • シーズンオフで長期間使用しない場合は、きれいに洗浄・乾燥させてから保管してください。

 家庭用プールの対策

  • プールの水は、その都度入れ替えるのが最も安全です。

  • もし水を数日間ためておく場合は、必ず市販の家庭用プール向けの塩素系消毒剤を使用し、適切な濃度を保ってください。

  • 使用後は水を抜き、プールをしっかり洗浄・乾燥させてから片付けましょう。

 特に注意が必要な方

 レジオネラ症は、誰でもかかる可能性がありますが、特に以下のような方は重症化しやすいため、より一層の注意が必要です。

  • ご高齢の方

  • 乳幼児

  • 喫煙者

  • 糖尿病、慢性呼吸器疾患、自己免疫疾患などの持病がある方

  • 免疫抑制剤やステロイドを使用している方

 ご家族に該当する方がいる場合は、ご家庭内の水回りの衛生管理に特に気を配ってあげてください。

 まとめ:正しい知識で、家庭内感染を防ぎましょう

レジオネラ菌は特別な菌ではなく、私たちの身近な環境に存在します。しかし、その性質を正しく理解し、「温かい水をためっぱなしにしない」「こまめな清掃と水の交換」という基本を守るだけで、感染リスクは大幅に減らすことができます。

万博のニュースをきっかけに、ぜひ一度ご家庭の水回りをチェックしてみてください。そして、万が一高熱や咳などの症状が出た場合は、重症化する前に、速やかに医療機関を受診することが何よりも大切です。

皆さまが健康で快適な毎日を過ごせることを、心から願っております。

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