メニュー

【医師が解説】胃の粘膜下腫瘍とは?放置して大丈夫?原因・症状・検査について

[2025.07.15]

 ハイサイ! 安謝ファミリークリニック 院長の高良です。
 「健康診断のバリウム検査で、胃粘膜下腫瘍の疑いがあると言われた」
 「胃カメラを受けたら、ポリープとは違う“こぶ”のような盛りあがりがあると言われた」

 このように指摘され、インターネットで検索してこのページにたどり着いた方も多いのではないでしょうか。腫瘍と聞くと、悪い病気ではないかとご不安に感じてしまいますよね。今回は、意外と知られていない「粘膜下腫瘍(SMT:Submucosal Tumor)」について、その正体や原因、必要な検査などを分かりやすく解説します。

胃の粘膜下腫瘍(SMT)とは?

 胃の壁は、食べ物が直接触れる最も内側の「粘膜層」から、その下の「粘膜下層」、さらに深い「固有筋層」「漿膜下層」「漿膜」というように、何層もの構造になっています。

 通常の胃がんやポリープが一番内側の「粘膜層」から発生するのに対し、粘膜下腫瘍は、その名の通り粘膜層より深い層から発生する腫瘍の総称です。

 粘膜の“下”に腫瘍が隠れているため、表面の粘膜は正常なことが多く、内視鏡(胃カメラ)で見ると、つるんとした滑らかな“こぶ”や“盛りあがり”として観察されます。

 

 粘膜下腫瘍は胃に最も多く見られますが、食道や十二指腸、大腸にできることもあります。
 ほとんどは良性ですが、注意も必要です。

 「腫瘍」と聞くと心配になりますが、粘膜下腫瘍の多くは良性であり、すぐに治療が必要となるケースは稀です。しかし、中には大きくなったり、悪性の性質を持っていたりするものも存在するため、「良性だから大丈夫」と自己判断せず、専門医による正確な診断を受けることが非常に重要です。

粘膜下腫瘍の主な種類

 粘膜下腫瘍にはいくつかの種類があり、代表的なものは以下の通りです。(※他にも色々な種類があります。)

 消化管間質腫瘍(GIST:ジスト):肉腫の一種である悪性腫瘍です。放置すると増大したり、他の臓器に転移したりすることがあるので治療が必要になります。
 平滑筋腫(へいかつきんしゅ):胃の壁の筋肉(平滑筋)から発生する良性腫瘍です。
 脂肪腫(しぼうしゅ):脂肪細胞からなる良性腫瘍です。
 神経鞘腫(しんけいしょうしゅ):神経を包む細胞から発生する、ほとんどが良性の腫瘍です。
 異所性膵(いしょせいすい):本来すい臓があるべき場所以外に、すい臓の組織が迷い込んでできたもので、腫瘍とは異なりますが、見た目が似ているため鑑別が必要です。良性腫瘍です。

粘膜下腫瘍の症状と原因

 症状:ほとんどは無症状

 粘膜下腫瘍の最大の特徴は、小さいうちは自覚症状がほとんどないことです。多くの場合、健康診断のバリウム検査や、他の目的で行った胃カメラ検査で偶然発見されます。

 しかし、腫瘍が大きくなるにつれて、以下のような症状が現れることがあります。

 腹痛、腹部の不快感、お腹の張り
 貧血、めまい、立ちくらみ(腫瘍からの出血が原因)
 黒い便(タール便、出血が原因)
 吐き気、嘔吐

 症状がないからといって安心はできません。症状が出たときには腫瘍がかなり大きくなっている可能性もあるため、早期発見が何よりも大切です。

 原因:はっきりとは分かっていない

 残念ながら、ほとんどの粘膜下腫瘍の発生原因は、まだ明確には解明されていません。
 ただし、GISTに関しては、細胞の増殖に関わる「c-kit(シーキット)遺伝子」や「PDGFRA遺伝子」の異常が原因であることが分かっています。

 粘膜下腫瘍の検査と診断

 粘膜下腫瘍が疑われた場合、その大きさ、形、発生した層などを詳しく調べるために、以下のような検査を行います。

 ステップ1:内視鏡検査(胃カメラ)

 まずは胃カメラで腫瘍の存在を確認します。大きさ、形、色調、表面の状態などを詳細に観察します。
通常のポリープや胃がんと異なり、表面の粘瘍は正常なことが多いため、一般的な生検(組織を一部つまむ検査)では腫瘍本体の細胞が採取できず、確定診断が難しい場合があります。

 ステップ2:超音波内視鏡(EUS)

 そこで重要になるのが超音波内視鏡(EUS)です。これは、内視鏡の先端に超音波装置がついた特殊なスコープで、胃の壁の内部をエコー検査のように詳しく観察できます。
 EUSを用いることで、

 腫瘍がどの深さの層から発生しているか
 正確な大きさ
 内部の性状(均一か不均一か、血流は豊富かなど)

 といった、通常の胃カメラでは分からない情報を得ることができ、診断の精度が飛躍的に向上します。特に、GISTと他の良性腫瘍を見分ける上で非常に有用な検査です。

 ステップ3:CT検査・生検

 腫瘍が大きい場合やGISTが強く疑われる場合には、CT検査で周囲の臓器への広がりや転移の有無を調べます。また、EUSを使いながら腫瘍に直接針を刺して組織を採取する「超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)」を行い、確定診断をつけることもあります。

治療方針:経過観察か、治療か

 検査の結果に基づき、治療方針を決定します。

 経過観察:悪性が疑われる所見がないサイズの小さなもの(2cm以下)は、すぐに治療せず、定期的に胃カメラで大きさや形に変化がないかを確認します(通常は年1回程度)。
 治療(手術・内視鏡的切除):以下のような場合は治療を検討します。
 GISTが疑われる場合
 腫瘍が2cmを超える場合(※種類や場所によります)
 経過観察中に大きくなってきた場合
 出血などの症状がある場合

 治療が必要と判断された場合は、手術が可能な高次医療機関へ、責任をもってご紹介させていただきます。

 まとめ:健診で異常を指摘されたら、まずは専門医にご相談ください

 粘膜下腫瘍について、ご理解いただけたでしょうか。最後にポイントをまとめます。

 ⭐️粘膜下腫瘍は、胃の粘膜より深い層にできる“こぶ”のような腫瘍の総称です。
 ⭐️ほとんどは無症状で、良性ですが、中にはGISTのような悪性の可能性のあるものも含まれます。
 ⭐️診断には、胃カメラに加えて超音波内視鏡(EUS)が非常に重要です。
 治療が必要かどうかは、種類や大きさによって決まります。自己判断せず、必ず専門医の診察を受けましょう。

 健康診断で「粘膜下腫瘍の疑い」と指摘された方、胃の不調が気になる方は、決して一人で悩まず、お気軽に当院にご相談くださ   
 い。

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME