逆流性食道炎とバレット食道:放置してはいけない胸やけとリスクについて
ハイサイ! 安謝ファミリークリニック院長の高良です。
「胸やけがする」「酸っぱいものがこみ上げてくる」そんな経験はありませんか?もしかしたら、それは「逆流性食道炎」かもしれません。そして、逆流性食道炎を放置することで、さらに深刻な「バレット食道」へと進行するリスクがあることをご存知でしょうか。
この記事では、逆流性食道炎の症状や原因、そしてバレット食道との関連性について、分かりやすく解説します。
逆流性食道炎とは?あなたの食道は大丈夫?
逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流することで、食道の粘膜に炎症が起こる病気です。食道は胃酸に対する防御機能が弱いため、胃酸にさらされると炎症を起こしやすくなります。
右上の赤で囲った場所が食道炎です。
主な症状
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胸やけ: 焼けるような不快感。
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呑酸(どんさん): 酸っぱいものが口の中や喉にこみ上げてくる。
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胃もたれ: 胃の不快感や重さ。
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喉の違和感: 喉の痛み、声枯れ、咳など。
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食事中の痛み: 食事をする際に胸やけが悪化する。
これらの症状は、日常生活の質を著しく低下させるだけでなく、放置することで食道に様々な問題を引き起こす可能性があります。
なぜ起こるの?原因は様々
逆流性食道炎の原因は一つではありません。
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下部食道括約筋の機能低下: 食道と胃の境目にある筋肉(下部食道括約筋)が緩むことで、胃酸の逆流を防げなくなります。加齢や生活習慣が影響します。
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胃酸の過剰分泌: ストレスや刺激物の摂取などにより、胃酸が過剰に分泌されることがあります。
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食道裂孔ヘルニア: 胃の一部が横隔膜の穴から食道側に飛び出してしまう状態です。これにより、胃酸が逆流しやすくなります。
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腹圧の上昇: 肥満、妊娠、きつい締め付けのある衣類、前かがみの姿勢などが原因で腹圧が上がり、胃が圧迫されて胃酸が逆流しやすくなります。
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食生活: 脂肪分の多い食事、カフェイン、アルコール、香辛料などの刺激物の過剰摂取も原因となります。
逆流性食道炎を放っておくとどうなる?バレット食道への進行
「ただの胸やけだから」と逆流性食道炎の症状を放置していると、食道の粘膜が炎症を繰り返すことで、食道の細胞が胃の細胞に似た形に変化してしまうことがあります。この状態を「バレット食道」と呼びます。
黄色で囲った部分がバレット食道です。
バレット食道とは?
バレット食道は、食道の粘膜が慢性的な炎症により変性し、正常な扁平上皮細胞が、胃や腸の腺上皮細胞に置き換わってしまう状態です。これは、胃酸に対する防御反応として起こると考えられています。
バレット食道のリスク
バレット食道自体は症状がありませんが、食道がん(腺がん)の発生リスクが高まることが知られています。特に、置き換わった細胞の範囲が広いほど(3cm以上長いとリスクが高いと言われています。)、がん化のリスクは上昇します。
早期発見・早期治療が重要!
逆流性食道炎の症状がある方は、早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。特に、以下のような症状がある場合は注意が必要です。
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症状が長期間続いている
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市販薬で改善しない
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体重減少がある
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飲み込みにくい(嚥下困難)
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吐血や黒い便がある
これらの症状は、逆流性食道炎や食道がんの可能性も示唆しているため、速やかに専門医の診察を受けてください。
当クリニックでの診断と治療
当クリニックでは、患者様の症状を詳しくお伺いし、必要に応じて内視鏡検査(胃カメラ)を実施しています。
内視鏡検査でわかること
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食道粘膜の炎症の程度
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食道裂孔ヘルニアの有無
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バレット食道の有無とその範囲、異型度
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食道がんの早期発見
「胃カメラはつらい」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、当クリニックでは患者様が安心して検査を受けられるよう、様々な配慮を行い、苦痛の少ない検査を心がけています。
バレット食道の診断
内視鏡検査で食道の粘膜が変性していることが確認された場合、バレット食道と診断されます。バレット食道が見つかった場合は、定期的な内視鏡検査による経過観察が非常に重要です。これにより、もしがんが発生しても早期に発見し、適切な治療を行うことができます。
日常生活でできる対策
治療と並行して、日常生活での工夫も逆流性食道炎の症状改善には欠かせません。
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食事: 脂肪分の少ない食事、消化の良いものを中心に。食べ過ぎ、早食いを避け、ゆっくりよく噛んで食べましょう。寝る前の2~3時間は食事を控えましょう。
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避けるべき食品: 刺激物(香辛料)、カフェイン、アルコール、柑橘類、チョコレート、炭酸飲料などは症状を悪化させる可能性があります。
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姿勢: 食後すぐに横にならない。前かがみの姿勢を避ける。寝るときは上半身を少し高くする。
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体重管理: 適正体重を維持する。
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禁煙: 喫煙は症状を悪化させることがあります。
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ストレス管理: ストレスは胃酸の分泌を促進します。リラックスする時間を作りましょう。
まとめ
胸やけや呑酸といった逆流性食道炎の症状は、決して軽視してはいけません。放置することでバレット食道へと進行し、将来的に食道がんのリスクを高める可能性があります。
「もしかして?」と感じたら、迷わず当クリニックにご相談ください。早期発見・早期治療、そして定期的な検査が、あなたの健康な食道を守る鍵となります。
