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【医師解説】GLP-1ダイエットって本当に安全?健康な人への影響と知られざる懸念点

[2025.09.16]

 ハイサイ! 院長の高良です。「GLP-1ダイエット」という言葉を耳にすることが増えました。医療の力で痩せられると聞くと魅力的に感じるかもしれませんが、その一方で「本当に安全なの?」「健康な人への影響はないの?」といった疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。

 安謝ファミリークリニックでは、患者様の安全と健康を第一に考えています。当院では自費診療でGLP-1ダイエットの提供は行っておりませんが、皆さまが正しい情報を得て、ご自身の健康について賢明な選択ができるよう、最新の論文に基づいた客観的な情報をお届けします。

 今回は、論文も参考にしながら、GLP-1受容体作動薬が健康な人に与える影響、現時点での評価、そして将来的な懸念点について、安謝ファミリークリニック院長が詳しく解説します。

GLP-1受容体作動薬とは?本来の用途とダイエットへの応用

 GLP-1(Glucagon-like Peptide-1)は、食後に小腸から分泌されるホルモンで、血糖値を下げるインスリンの分泌を促進したり、胃の動きを緩やかにして食欲を抑えたりする働きがあります。

 GLP-1受容体作動薬は、このGLP-1と似た作用を持つ薬剤で、本来は2型糖尿病の治療薬として開発されました。インスリンの分泌を促し、血糖値を安定させる効果が期待できるため、糖尿病患者さんの治療に広く用いられています。

 しかし、その食欲抑制効果や体重減少効果から、近年では肥満治療、さらには健康な方へのダイエット目的での使用が注目されています。

GLP-1受容体作動薬、健康な人への影響は?

 研究結果の一部を参考にすると、健康な人におけるGLP-1受容体作動薬の影響について、以下のような知見が報告されています。

論文①:健康な成人におけるGLP-1受容体作動薬の効果に関するレビュー
 健康な(糖尿病ではない)被験者を対象とした複数の研究を分析し、GLP-1受容体作動薬の投与によって統計的に有意な体重減少が認められたと報告されています。また、一部の参加者では食欲の低下や満腹感の増加も確認されています。

論文②:健康なボランティアにおけるGLP-1アナログの薬物動態と安全性プロファイル
この研究では、健康なボランティアに対してGLP-1アナログを投与し、その薬物動態と安全性を評価しています。結果として、一般的な副作用(吐き気、下痢、便秘など)は認められたものの、深刻な健康被害や重篤な有害事象は報告されなかったと結論づけています。これらの副作用は、多くの場合、一時的であり、用量漸増によって軽減される傾向にあることも示唆されています。

現時点での評価:明確な健康被害は指摘いまにところあまりない。

これらの論文からは、健康な人に対してGLP-1受容体作動薬を投与した場合、体重減少や食欲抑制効果が期待でき、かつ現時点では明らかな重篤な健康被害を指摘できるほどのデータは不足している、または報告されていないと言えるでしょう。吐き気などの消化器系の副作用はよく知られていますが、これらは多くの場合、一時的なものとされています。

GLP-1ダイエットの懸念点

1. 長期的な安全性に関するデータ不足

論文では、多くが比較的短期間の研究です。GLP-1受容体作動薬を健康な人が数年、あるいはそれ以上の長期間にわたって使用した場合の、心血管系、内分泌系、消化器系(膵炎、胆石症、甲状腺髄様がんのリスクなど、糖尿病患者では指摘されることもある副作用)への影響や、栄養状態の変化については、まだ十分なデータが蓄積されていません。
「健康被害が指摘できない」と「長期的に見て完全に安全である」は全く異なる意味を持つことを理解しておく必要があります。

2. 必要性の問題と医療資源の適正利用

GLP-1受容体作動薬は、本来、病気の治療のために開発された薬剤です。健康な方が美容目的で使用することが、限られた医療資源の適正利用の観点から適切なのかという議論もあります。また、本来必要のない薬剤を服用すること自体が、身体に何らかの負担をかける可能性も否定できません。

3. リバウンドと自力での体重管理能力の低下

薬剤によって強制的に食欲を抑え、体重を減らしたとしても、その効果が切れた後に、食事習慣や生活習慣が改善されていないと、リバウンドのリスクが高まります。また、薬剤に頼りすぎることによって、自身の体と向き合い、自力で体重を管理する能力が育ちにくい可能性も懸念されます。

4. 精神的・心理的影響

「薬を飲めば痩せる」という安易な考え方は、摂食障害につながるなど、精神的な健康に悪影響を及ぼす可能性もはらんでいます。ダイエットは、心身の健康を総合的に考えるべきものです。

5. 自己判断による使用の危険性

インターネット上では、個人輸入などでGLP-1受容体作動薬を入手できる情報もありますが、これは非常に危険な行為です。偽造品のリスクや、医師の適切な診断・管理なしに使用することで、予期せぬ重篤な健康被害につながる可能性があります。

健康的で持続可能なダイエット

 GLP-1ダイエットのような医療ダイエットを安易に推奨するのではなく、根本的な生活習慣の改善こそが、健康的で持続可能な体重管理への近道だと考えています。

  • バランスの取れた食事: 無理な食事制限ではなく、栄養バランスの取れた食事を心がける。

  • 適度な運動: 日常生活に運動を取り入れ、基礎代謝を上げる。

  • 十分な睡眠: 質の良い睡眠は、食欲コントロールにも繋がります。

  • ストレス管理: ストレスは過食の原因となることがあります。リラックスできる時間を作ることも大切です。

まとめ:安易な飛びつきは避け、医師と相談を

GLP-1ダイエットは、特定の疾患を持つ方にとっては有効な治療法であり、肥満のかたにたいしてはメリットが多く導入されていくといいと思っております。しかし、健康な人が美容目的で使用することについては、現時点では長期的な安全性に関する確固たるデータが不足しており、安易に飛びつくことは避けるべきだと思います。

体重管理は、一時的な手段に頼るのではなく、ご自身の体と心の健康を総合的に見つめ直す良い機会です。
もし、ご自身の体重や健康についてご心配なことがあれば、まずは信頼できる医療機関で医師に相談し、ご自身に合った、安全で確実な方法を見つけることをお勧めいたします。

 

 

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